U&I
「それより早く歩いてよね」


二メートル後ろの由宇に首だけ振り返らせて言う。

由宇は私よりも脚が遥かに長いのに、歩くのは亀並みに遅い。


「えー、面倒臭い。歩きたくない」


立ち止まっている私にやっと追いついた由宇が、私の頭上に自分の頭を横に倒す形でコツンと乗せた。


「重い!ほらっ遅刻するよ!」


私はその頭を右手で押し上げると由宇を一睨み。

実は由宇がこんな無気力人間だから、由宇のお母さんから私は一緒に登校して欲しいと頼まれているのだ。


「行くから手、繋いでよ」


由宇は甘えた子犬の顔をしながら、右手を差し向けてきた。


「自分で歩きなさい」


冷たくあしらうと由宇は目を鋭い形にする。
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