U&I
「モデルの顔殴るヤツいる?」
由宇はやっと起き上がると、私が平手打ちをした右頬を眠そうな顔で労るように摩っている。
由宇は中学三年の四月に原宿を一緒に歩いていたら、今在籍しているモデル事務所にスカウトされた。
あの頃から一八〇センチの身長で、身体の半分の脚の長さと、小ぶりの顔、目立たないわけがなかった。
その二ヶ月後、ティーン向けファッション雑誌に小さく載っただけで問い合わせ殺到。
高校一年の九月現在、由宇は看板モデルにまでなった。
「今日撮影じゃないでしょ!てか、私は悪く無いもん!被害者だもん!」
私は唇を尖らせたままプイッと顔を背ける。
「俺が悪いの?思春期の男子の部屋に勝手に入ってくる女子高生が悪いと思うよ」
反省ゼロの言葉に背けた顔を由宇に戻す。
「じゃあ女子高生の太腿を勝手に触るヤツいる!?」
「寝惚けてたし、じゃあ今度からは許可を取る」
「じゃあってどういうこと!?あっ!まだ寝惚けてて自分が言ったことの意味もわかってないんでしょ!」
「亜衣は朝から元気だね」
由宇は変に感心しながら、ふあぁと手を口に添えながら眠そうに欠伸を呑気にしている。