臆病者の僕は、別れの時に君にバカと言った
自分の身長を考えずに立ち上がったせいで、かなりの衝撃が頭にきた。くらくらとする頭を抱えながら、声のしたほうを見ると、そこには制服を着た女の子がいた。
昨日見た七海そっくりの、女の子。
「かわんないねえ、久人」
「七海?」
「そうだよ」
夢を見ているのではないかと思って、先ほど強打した部分を触ると、鈍痛が頭に響いた。
夢ではないようだ。
「お前、どうして?」
「引越しになっちゃてさ。でも今度は海外だっていうし、こっちにあるお母さんの実家に、お母さんと、じいちゃん、ばあちゃんと住むことにしたの」
「でも、お前なんでここに……」
「引越し作業してたら懐かしいものが出てきたからさ」
ひらひらとこちらに見せてくる紙は、少し焼けており、古くなっている封筒だった。
七海がここの菓子缶の中に手紙を入れる時によく使っていた封筒。
裏には『一之瀬七海より』という丸っこい文字が入っている。
「懐かしいよね、これ」
「それって……手紙だよな」
「そう。引越しの当日にどうしてもここに来たくて、引越しの作業を抜けてここに来たんだ。だけど、久人はいないし、手紙だけあったから、手紙だけ貰ってさ」
「あの手紙……読んだ……?」
「勿論。あの甘ぁい手紙、読んだわよ」
「そ……そっか」
頬に熱がこもっていくのがわかる。脳内では、自分が望まないのにもかかわらず、あの時の手紙の内容が一言一句思い出されていく。
あの時の手紙は、読まれなかったほうがよかったかもしれない。
今の自分が恥ずかしくてたまらない。
「でね、私も手紙を書いたのよ。久人のくれた手紙の返事として。見たい?」
「……見たいさ」
「でも、ダーメ」
「なんでだよ」
「目の前で小学校の頃の手紙を読まれるとか……恥ずかしいに決まってるでしょ!察しなさいよ、久人のバカ!」
「誰がバカだよ!俺だって恥ずかしい思いしてるんだよ、バカ!」
「またバカって言った!バカって言う方が……って、懐かしいね。こういうの」
「……そうだな」
「さて、と」
七海は体を入り口のほうへと向けた。
「帰るね、私」
「待てよ」
「なに?」
「手紙は、置いていかないのか?」
「置いていけるわけないでしょ。それとも、読みたいの?」
「あの時の返事をさ、俺、聞いてないって思って」
「なんの?」
「手紙の返事をさ」
昨日見た七海そっくりの、女の子。
「かわんないねえ、久人」
「七海?」
「そうだよ」
夢を見ているのではないかと思って、先ほど強打した部分を触ると、鈍痛が頭に響いた。
夢ではないようだ。
「お前、どうして?」
「引越しになっちゃてさ。でも今度は海外だっていうし、こっちにあるお母さんの実家に、お母さんと、じいちゃん、ばあちゃんと住むことにしたの」
「でも、お前なんでここに……」
「引越し作業してたら懐かしいものが出てきたからさ」
ひらひらとこちらに見せてくる紙は、少し焼けており、古くなっている封筒だった。
七海がここの菓子缶の中に手紙を入れる時によく使っていた封筒。
裏には『一之瀬七海より』という丸っこい文字が入っている。
「懐かしいよね、これ」
「それって……手紙だよな」
「そう。引越しの当日にどうしてもここに来たくて、引越しの作業を抜けてここに来たんだ。だけど、久人はいないし、手紙だけあったから、手紙だけ貰ってさ」
「あの手紙……読んだ……?」
「勿論。あの甘ぁい手紙、読んだわよ」
「そ……そっか」
頬に熱がこもっていくのがわかる。脳内では、自分が望まないのにもかかわらず、あの時の手紙の内容が一言一句思い出されていく。
あの時の手紙は、読まれなかったほうがよかったかもしれない。
今の自分が恥ずかしくてたまらない。
「でね、私も手紙を書いたのよ。久人のくれた手紙の返事として。見たい?」
「……見たいさ」
「でも、ダーメ」
「なんでだよ」
「目の前で小学校の頃の手紙を読まれるとか……恥ずかしいに決まってるでしょ!察しなさいよ、久人のバカ!」
「誰がバカだよ!俺だって恥ずかしい思いしてるんだよ、バカ!」
「またバカって言った!バカって言う方が……って、懐かしいね。こういうの」
「……そうだな」
「さて、と」
七海は体を入り口のほうへと向けた。
「帰るね、私」
「待てよ」
「なに?」
「手紙は、置いていかないのか?」
「置いていけるわけないでしょ。それとも、読みたいの?」
「あの時の返事をさ、俺、聞いてないって思って」
「なんの?」
「手紙の返事をさ」