臆病者の僕は、別れの時に君にバカと言った
全てを配置し終えて椅子に座ると、言いようのない気持ちよさを感じた。
自分だけの秘密基地。
誰も知らない秘密基地。
それだけで、小学生の僕は大満足だった。
だけど、その秘密基地は、すぐにバレることになった。
「何してるの?」
ゴミ捨て場から拾ったイスに座って、マンガを読んでいた僕はその声に驚き、立とうとして床に頭をぶつけた。
その場にうずくまりながら世界を呪う言葉を口から吐き出す。
「だ……大丈夫?」
近付いてくる足音が聞こえる。もし大人だったら、この場から逃げなければいけない。見つかってしまえば、親にバレてしまう。それが一番怖かった。親は秘密基地をもつことを理解してはくれないことを僕は知っていた。
この秘密基地を作る前に一度、クラスメイトと一緒に山の中に雨風をしのげるような場所を作って秘密基地にしていたことがあった。場所としては最適で、蚊も来ないし、広く使えるという最高の場所。けれどもすぐに場所がバレてしまい、その場にあるものは全て捨てられた。集めていた椅子やテーブルに、どこかの店で廃棄になったマスコット、カラーコーンに、工事現場でくすねてきたよく尖った木材。全てが僕らにとっては宝物だったが、大人にはそれは全て違うように見えたようだ。
「コンナニ ゴミ バカリ アツメテ」
大人たちはそう言って、それらを容赦なく捨てた。
それ以来、秘密基地は作っていなかった。
でも、部屋を持たない僕は、どうしても一人になれる場所が欲しかった。小学生にとって、親に見つからずに一人で好きに使える場所、というのは魅力的な存在だった。それを取り上げられるのも、ゴミと言われて集めた物を捨てられるのも嫌だった。
『せめて大人じゃありませんように』と願いながら目を開けると、こちらを不安気に見つめる女の子がいた。
ぱっちりと開かれた目に、大きな黒目。ホクロが目尻にうっすらとあるのがわかる。
こいつ、見たことあったけど……誰だっけ?
強く打った頭を必至に働かせながら、声も発さずに名前を思い出そうとしていると、受け答えしないのがまずかったのか、どこかへ行こうとしたので声をあげた。
「大丈夫だから!」
彼女は振り向いて、こちらに戻ってきた。
今度は頭を打たないようにゆっくりと体を起こすと、彼女はもう一度声をかけてきた。
「本当に、大丈夫?」
自分だけの秘密基地。
誰も知らない秘密基地。
それだけで、小学生の僕は大満足だった。
だけど、その秘密基地は、すぐにバレることになった。
「何してるの?」
ゴミ捨て場から拾ったイスに座って、マンガを読んでいた僕はその声に驚き、立とうとして床に頭をぶつけた。
その場にうずくまりながら世界を呪う言葉を口から吐き出す。
「だ……大丈夫?」
近付いてくる足音が聞こえる。もし大人だったら、この場から逃げなければいけない。見つかってしまえば、親にバレてしまう。それが一番怖かった。親は秘密基地をもつことを理解してはくれないことを僕は知っていた。
この秘密基地を作る前に一度、クラスメイトと一緒に山の中に雨風をしのげるような場所を作って秘密基地にしていたことがあった。場所としては最適で、蚊も来ないし、広く使えるという最高の場所。けれどもすぐに場所がバレてしまい、その場にあるものは全て捨てられた。集めていた椅子やテーブルに、どこかの店で廃棄になったマスコット、カラーコーンに、工事現場でくすねてきたよく尖った木材。全てが僕らにとっては宝物だったが、大人にはそれは全て違うように見えたようだ。
「コンナニ ゴミ バカリ アツメテ」
大人たちはそう言って、それらを容赦なく捨てた。
それ以来、秘密基地は作っていなかった。
でも、部屋を持たない僕は、どうしても一人になれる場所が欲しかった。小学生にとって、親に見つからずに一人で好きに使える場所、というのは魅力的な存在だった。それを取り上げられるのも、ゴミと言われて集めた物を捨てられるのも嫌だった。
『せめて大人じゃありませんように』と願いながら目を開けると、こちらを不安気に見つめる女の子がいた。
ぱっちりと開かれた目に、大きな黒目。ホクロが目尻にうっすらとあるのがわかる。
こいつ、見たことあったけど……誰だっけ?
強く打った頭を必至に働かせながら、声も発さずに名前を思い出そうとしていると、受け答えしないのがまずかったのか、どこかへ行こうとしたので声をあげた。
「大丈夫だから!」
彼女は振り向いて、こちらに戻ってきた。
今度は頭を打たないようにゆっくりと体を起こすと、彼女はもう一度声をかけてきた。
「本当に、大丈夫?」