わんこ系男子と甘々な日常
第1章
ご主人様と忠犬
「────奈子先輩」
短い春休みも終わり、高校二年生になって初めての登校中。
春の陽気に眠気を誘われて密かにあくびを一つしたとき、やや高めの声に後ろから呼ばれた。
私の名前は淵上奈子。
この辺に奈子さんがいなければ私のことを呼んでいるんだと思う。
でも……せん、ぱい?
二年生になったばかり、しかも、部活に入っていない私に後輩なんていないんだけど……。
そう思いつつも、どこか聞き覚えのある声に記憶を辿りながら振り返った。
すると、
「久しぶり!!」
「波柴蒼空くん……!?」
「せいかーい!さすが先輩、記憶力いーね!」
ニコッと人懐っこい笑顔を向け、私の元へ駆け寄ってくる中学時代の後輩くんがいた。
……私と同じ高校の制服を身に纏って。
蒼空くんの学力とうちの高校の学力は、釣り合っていなかったような気がする。
だけど、間近に来た制服は間違いなく私と同じ柄で……。
あれ、もしかして私はまだ夢の中にいるの……?
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