わんこ系男子と甘々な日常


委員会が終わって一緒に報告書を作る。


蒼空くんは私が指示したとおりに紙へ綴る。


私は小さく響く時計の針の音を聞きながら、夕焼けに照らされる後輩の幼い横顔を静かに目に焼き付けていた。


合間に挟む雑談はいつもどおり。


でも、蒼空くんのペンを動かすスピードはいつもよりも遅かった気がする。


そしていよいよ図書室から出なければいけなくなったとき。


蒼空くんが改まったように私へと向き直った。


『奈子先輩はあと半年くらいでいなくなっちゃうんだ……』

『まぁ、卒業するからね』

『そう、だよね。もうちょっとで離れ離れになる……』


明らかに沈んだ声が普段のハイテンションとは対称的で余計に悲痛さが感じられた。


元からシンと静まっていた図書室の空気もずんと重くなったようにも思えた。


そんな蒼空くんに掛けられる言葉なんて思い浮かぶわけもない。でも、なにか言った方がいいかと掛けるべき言葉を探していると、


『卒業……しないで。寂しい……』


黒く濡れた不安定な瞳で、掻き消えそうな小さな声で、そう懇願された。


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