わんこ系男子と甘々な日常
傍から見ればそれは大袈裟なもので、もしも近くに誰かがいればきっと笑われていた。
だって、恋人どころか友人ですらもない、先輩と後輩というどこにでもある関係の私たちが離れるだけだし。
それに、私が県外の高校に行くならまだしも、電車で何駅か揺られれば着く近さで引越しもしない。
目を潤ませるほどのことじゃない。
……ただ、二人きりの時間がなくなってしまうだけ。
『冷静に考えて、無理でしょ』
『………』
『可愛く口を尖らせても、無理なものは無理なの』
『奈子先輩……ちょっとくらいは優しくしてくれてもいいじゃん!』
蒼空くんの感情に流されたらつられて私まで寂しくなってしまいそうで。
それを振り切るためにも現実を突きつけたら、ぐわっと吠えられてしまった。
湿っぽい空気が一気にどこかへ消えてしまったのはいいけれど、なんだか少しだけ理不尽だと思うのは私の気のせいじゃないはず。