わんこ系男子と甘々な日常
蒼空くんがいつもと違って強く抱き締めるから。
可愛いとはかけ離れた姿を見せるから。
そのせいで私は一時的におかしくなっちゃった。
いわゆるギャップってやつにドキドキしてしまってるんだ。
だったら、これは気の迷いってやつで。
委員会も次の学年に引き継いでて、あと二ヶ月後には卒業するから蒼空くんと関わることはもうない。
それに、今の蒼空くんの行動にはなんの意味もない、ご主人様に飛びつくわんこの心情と同じようなものだから。
こんなに心臓が早くなるのは、私が変だ。
ハグに深い意味はない。いつもの可愛いスキンシップ。蒼空くんは可愛い後輩。
そう心の中で繰り返し唱えていると、次第に心臓は落ち着いて元のリズムを刻み始めた。
うん、大丈夫。ただの先輩と後輩の関係。
もし親密だと言うならばご主人様と忠犬になるだけ。
それはなんだかちょっと、私としては嫌な表現なのだけどそれは今は置いておいて。
とにかく、蒼空くんを好きだとかそんなわけがない。
ドキドキの余韻を感じつつ、それに抵抗するためにも。
次の試合は、別の競技を見に行った。