生産性のない恋
それなのに、その次の日に彼女から『どうしよう』とメールが来た。

僕はやっと、彼女の問いかけは答えなのだと理解した。

僕は『会いたい』と電話をした。
彼女は躊躇いながら『うん』と言っただけで、あとは僕がそっと窓を叩くのをただ待っていた。

彼女はずるい。
そして、僕はもっとずるい。

あのとき彼女が切ない表情で振り絞った『さよなら』を分からないふりでかき消した。


いつだって、彼女は問いかける側だ。

僕は彼女に『会う?』と聞かれたら『会う』と答えるし、『明日まで一緒にいられる?』と聞かれたら首筋にキスを落とす。

彼女の問いかけがなければ、僕は答えを出すこともなく、ただ独り帰り、無駄な時間を過ごして、疲れ、果てるだけだ。

生産性のない生活はむしろ彼女のいない日々のことだと思えてきた僕は、手遅れなのかも知れない。
彼女が彼氏と別れると一度も口にしていないことは、分かっている。



「待った?」

「いや、今来たところ」

ちょうど20時を回ったところだった。

今日も彼女の、問いかけのような告白を聞いて安心する僕がいる。
彼女の髪を優しくとかしていく。

「私のこと好きだね?」

そう言いながら、私はあなたのことが好きと瞳が訴えている。
彼女の問いかけは腹立たしい程に愛おしい。

「好きだよ」

そうして僕たちは生産性のない恋をつみ重ねていく。


終わり
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