彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
失敗
入学式当日は1年A組の教室に入っても知っている子と少し会話をした程度で終わってしまった。
その子とは中学までが同じだったけれど、私とはタイプが違う派手めな子だ。
今はその子も新しい友人がいなくて私なんかに話しかけてくれるけれど、きっとすぐに自分にあった友人を見つけてしまうだろう。
だから、今日は自分から近くの子に話しかけないといけない。
そう思うと朝から緊張してしまって、うまく制服のリボンが結べなかった。
「知奈」
ローファーに片足を突っ込んだところで後ろからお母さんに声をかけられた。
お母さんは私の髪を手ぐしで簡単に整えてくれて「学校、大丈夫そう?」と、声をかけてくれた。
「うん。大丈夫だと思う」
「でも、なにかあったらすぐに言うのよ? 今からだって特別――」
「お母さん、私もう高校生なんだよ? 本当に大丈夫だから」
私はお母さんが何を言おうとしているのかわかって、途中で言葉を遮った。
最後まで聞きたくはなかった。
「そう、そうよね」
お母さんの声は少し落ち込んでいるような、それでも安堵しているような、複雑な音色をしている。
でも泣いたり怒ったりはしていない。
私はお母さんへ笑顔を向けると「行ってきます」と玄関を出たのだった。
その子とは中学までが同じだったけれど、私とはタイプが違う派手めな子だ。
今はその子も新しい友人がいなくて私なんかに話しかけてくれるけれど、きっとすぐに自分にあった友人を見つけてしまうだろう。
だから、今日は自分から近くの子に話しかけないといけない。
そう思うと朝から緊張してしまって、うまく制服のリボンが結べなかった。
「知奈」
ローファーに片足を突っ込んだところで後ろからお母さんに声をかけられた。
お母さんは私の髪を手ぐしで簡単に整えてくれて「学校、大丈夫そう?」と、声をかけてくれた。
「うん。大丈夫だと思う」
「でも、なにかあったらすぐに言うのよ? 今からだって特別――」
「お母さん、私もう高校生なんだよ? 本当に大丈夫だから」
私はお母さんが何を言おうとしているのかわかって、途中で言葉を遮った。
最後まで聞きたくはなかった。
「そう、そうよね」
お母さんの声は少し落ち込んでいるような、それでも安堵しているような、複雑な音色をしている。
でも泣いたり怒ったりはしていない。
私はお母さんへ笑顔を向けると「行ってきます」と玄関を出たのだった。
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