彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
そうしている間になんとなく違和感を覚え始めていた。


白衣を着た男性が毎日病室へやってきて、私の様子を細かくチェックする。


それが私の担当医だということはわかっていたけれど、顔を見ても誰かがわからないのだ。


その人の声、体格、しぐさ、ネームを見て自分の担当医だと気がつくことができる。


最初はそれが異変だとは気が付かなかった。


だって、相手の顔は確かにみえているのだから。


それに両親や祖父母の顔はちゃんとみんな認識することができた。


もちろん鏡の中の自分の顔だって。


だけどある日先生にそのことを説明するととたんに声が険しくなった。


知らない看護師さんを連れてこられて「この人は今怒っているかな? 泣いているかな?」という質問をされた。


そんなの顔をみればすぐにわかる。


それなのに私には答えられなかった。


顔が見えているのに相手の表情がわからない。


怒っているのか泣いているのかの判断は、その人の声色を聞かないとわからない。


そんな私に両親はひどく困惑していた。


どうしてこんなことになったしまったのかと、泣いてもいた。


事故の後遺症による失顔症だということはすぐにわかった。
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