彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

私は佳太に恋をしている。


ここまで本気で人を好きになったことなんてないくらいに。


だからもう1度会いたい。


ちゃんと会って、謝りたい。


佳太のおかげでA組で授業を受けることができて、今は友達もたくさんいる。


そのことをちゃんと報告して、お礼も言いたい。


気持ちはどんどん大きく膨らんできて、くる日もくる日も私は佳太を探し続けた。


3年生の教室はもちろんのこと、2年生や1年生の教室もくまなく探した。


それでもやっぱり、佳太を見つけることはできなくて、気がつけば梅雨の時期が始まっていた。


校舎裏には青いアジサイがキレイに咲いていて、霧雨に濡れて輝いている。


今の季節は念入りな水やりは不必要らしく、雨が降った日はこなくていいことになっていた。


それでも私はもしかしたら佳太が来ているんじゃないかと思って、毎日足を運ばずにはいられなかった。


「キレイ」


アジサイを見て呟く。


青くて小さな花の集合体はサファイヤみたいだと、大げさでなく思う。


宝石を身につけなくてもこんなところに宝石と同等に輝くものがあるんだ。


そうしてアジサイを見ていると佳太の姿が浮かんでくるようで、なかなか帰ることができなかったのだった。
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