彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

お昼にはお母さんが用意してくれていたお粥を少しだけ食べて薬を飲んで、すると自然と眠りにつくことができた。


次に目が冷めたときには階下から包丁を使う音が聞こえてきて、窓の外はオレンジ色に染まっていた。


「もう6時か」


スマホで時間を確認して呟く。


階下から聞こえてくる音はお母さんが夕飯の準備をしている音だ。


しばらく布団の中で目を閉じてその音に耳を傾ける。


小気味いい音が続いてまた夢の中へと引き込まれて行きそうになったとき、それを遮るように玄関チャイムが鳴り響いた。


私はうっすらと目を開ける。


包丁の音が止まり、玄関へ向かうスリッパの音が聞こえてくる。


お母さんが玄関を開けて誰かと会話している。


男の人だろうか、遠くてよくわからないけれど低い声が聞こえてくる気がする。


セールスマンとかだったらどうしよう。


お母さん、ちゃんと断れるかなぁ?
< 109 / 141 >

この作品をシェア

pagetop