彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
「私、佳太くんに嫌われたんだと思ってた。だからもう放課後も花壇に来てくれなくて、もう、会えないと思って」


本当に子供みたいにしゃくりあげながら説明すると、言葉はとぎれとぎれになって、意味をうまく伝えられない。


それでも佳太くんは真剣に私の言葉を聞いてくれて、何度も頷いてくれた。


佳太くんは私の手を握りしめると「嫌いになんてなるわけない」と、囁いた。


「嫌いなら毎日毎日花壇に会いに行ったりもしない」


「本当に?」


「俺を信じて」


佳太くんの手がギュッと強さを増して、私の汗ばんだ手のひらはかすかに震える。


好きな人とこんなに近い距離にいることに今更ながら緊張してきてしまった。


「佳太くんは何年生なの? どれだけ学校内で探してみても、全然見つけられなかったの」


佳太くんの学年とクラスが知りたい。


そうすれば自分から会いに行くことができるんだから。


しかし、佳太くんは沈黙したまま答えてくれなかった。


代わりに中腰になった佳太くんの顔がスッと近づいてくる。


なにか耳打ちされるのだろうかと思って私の顔を近づける。


しかし次の瞬間、唇に柔らかな感触が覆いかぶさってきていて、私の頭は真っ白になった。


その感触はすぐに離れていってしまい、まばたきを繰り返す。


「俺の番号を教えておくから、なにかあったら連絡して」


佳太くんがそう言ってスマホを取り出してくれたのに、私はまだぼーっとしてしまって返事もできなかったのだった。
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