彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
坂下さんの言葉を理解するまで数秒が必要だった。


教育実習生?


それって、大学生ってこと?


「あんたを教室に通わせることで、佳太くんの株が上がる。だから佳太くんはあんたにかまってたんだよ」


坂下さんの表情はわからないのに、ニヤついた笑みを浮かべていることだけは理解できた。


ねばねばとした声色は私の体中にへばりついてきて、なかなか引き剥がすことができない。


「佳太くんはあんたになんて興味がない。あんたで株を上げることに興味があったの。勘違いしないでよね」


坂下さんは最後に吐き捨てるようにそう言うと、私の手を振り払うようして離し、階段を上がっていってしまったのだった。
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