彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

トイレにはできるだけ1人で行くようにしている。


特に女子トイレは色々な生徒が溜まっておしゃべりをしているから、誰が誰だかわらかなくなりやすい。


一緒に行った子の判別がつかなくなる危険があった。


今日は雪ちゃん経由で2人の友人を紹介してもらったから(昨日トイレに子たちだ)余計に混乱してしまう。


一気に覚える人数が増えて少し疲れていたこともあり、私は個室で時間を潰すことにした。


次の授業が始まるまで10分はあるからここで休んでいよう。


顔で相手の判別ができない私にとって、覚えることは多い。


「ねぇ、同じクラスの矢沢って子、なんか変じゃない?」


突然外からそんな声が聞こえてきて私は身構えた。


「矢沢? 誰それ?」


「ほら、一番うしろの方の席の子」


どちらも聞き覚えのない声。


だとしたら私のことじゃなくて、私と同じ名字の他の人のことを言っているのかもしれない。


矢沢なんて、ありふれた名字だ。
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