彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
それぞれの声や癖を覚えて間違えずに会話をするのは至難の業。


高校にもなると胸のネームもつけていないし、ときには困り果ててただ笑顔を貼り付けて硬直しているだけになってしまう。


そんなに困るのなら失顔症のことを説明してしまえばいいのだけれど、それも簡単なことではなかった。


みんなの輪の中で水をさすようなことはしたくない。


それに、病気を知ったことで周りの人たちに気を使わせてしまうことは、よくあることだった。


自分の両親のように、友人にまで心配されると私の心も疲れ果ててしまう。


とにかく自分が頑張れば良いんだ。


自分が頑張れば……。


「昨日さぁ」


「なぁに? カリンちゃん」


「え? 私トオコだけど」


「あ、ごめん!」


「なにしてるの2人とも」


「カ、カリンちゃん?」


「雪だよ、知奈ちゃん」


「あ……」
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