彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
『めんどくせぇな』


その言葉に私は息が止まってしまった。


きっとそれを言った子は悪気はなかったんだと思う。


軽い気持ちで、本心からじゃなかったとわかっている。


それでも私の心には言葉の刃が突き刺さってしまった。


それから私は何度もそういうことを耳にするようになった。


例えばトイレに入っていると「知奈ちゃん、ケイコちゃんのことを呼び間違えたことあるよね」とか。


自分で気が付かなかったミスを、みんなが気を使って聞き逃してくれていたことに気がついた。


私が病気だとわかると、みんなが気を使いはじめる。


私をはれもののように扱い始める。


それは、自分自身がよく理解していることだった。
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