彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
別になにもないですと言って教室へ向かえばよかったけれど、できなかった。


私の病気のことを知っているのは先生だけだ。


なんでも相談するようにと、入学したときにも言われている。


うつむいて押し黙っている間に数学の授業が始まるチャイムがなり始めてしまった。


私は肩を落として先生の顔を見た。


どんな表情をしているのかわからないが、きっと真剣な目をしているのだろうということが、雰囲気で伝わってきた。


「……授業の変更って、みんな知っているんですよね?」


聞くと、先生は頷いた。


この場に誰もいないのだから、当然のことだ。


「クラスのメッセージグループで伝えてもらったんだ」


「メッセージグループ?」


思わず聞き返してしまって先生が息を飲んだ。


「まさか矢沢」


そこまで言って言葉を切る。


最後まで言えば私が傷ついてしまうからだろう。


クラスのメッセージグループがあるなんて、私は知らなかったのだから。
< 25 / 141 >

この作品をシェア

pagetop