彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

夕飯時、特別学級に入りたいと伝えると、両親はひどく驚いた顔を浮かべた。


「どうした急に。なにかあったのか?」


お父さんは読んでいた新聞紙を横へ置いて身を乗り出して聞いてくる。


「そうじゃないの」


私は慌てて左右に首を振って否定する。


両親を不安にさせたいわけじゃない。


「ただ、今日偶然特別学級での授業を見てきたの。そしたらみんなとても優秀で、数学の授業なんてA組よりもずっと先に進んでたの。みんな自分の病気を隠さずに堂々としてた」


思い出して気分が高揚していくのを感じる。


私のあんな風になりたい。


人目や人の気持を気にしてばかりいて自分を殺して行きて行きたくない。


特別学級でなら、きっとそれがうまくいく。


「本当にそれでいいの?」


お母さんは眉を下げて不安そうな表情だ。


せっかくA組での生活に慣れてきたのに、もったいないと思っているのかもしれない。


だけどそれは私がイジメについて隠しているからだ。


私は大きく頷いた。


「先生はね来たいときだけ特別学級に来ればいいって言ってくれているの。担任の先生とも、ちゃんと話してきた」
< 35 / 141 >

この作品をシェア

pagetop