彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

職員室のドアをノックして開けるとちょうど担任の先生が出てくるところだった。


「矢沢、良いところにきた」


先生は私を促して職員室横の会議室へと入っていく。


今は使われていないみたいで、誰の姿もなかった。


「今日から特別学級だけど、大丈夫そうか?」


「大丈夫です」


私は頷く。


正直すごく緊張していたけれど、昨日出会った子たちはみんな優しそうだった。


それに、これは私自身が決めたことでもある。


今更怯えてなんていられない。


「授業なんだけど、移動教室のときだけはA組に戻って一緒に行うことになる。いいか?」


「はい」


それも、昨日先生と話をしたときに聞いていたことだった。


特別学級の子たちはみんなそれぞれクラスに席があり、移動教室の時は一緒に授業をしているらしい。


実験などを行う教室が、B館にはないからだ。


「移動教室がある日は事前に大田先生に伝えておくから、なにも心配はいらない。でも、どうしてもA組の子たちと授業をしたくない時は遠慮なく言って。それからA組に戻りたいときも、遠慮なく言うこと」


大田先生とは特別学級の男性の先生のことだ。


私は先生の言葉に何度も頷いた。


私のためにここまで考えてくれているのだから、きっと本当に心配はないのだと思えてくる。
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