彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

帰宅する準備を済ませた私は校門へは向かわず、校舎裏へと向かった。


すると先生が言っていたとおり、そこには花壇があった。


茶色いレンガで囲まれた花壇には色とりどりの花が咲いている。


広さは畳2畳を横に並べたくらいだ。


「えっと、ホースは……」


先生が教えてくれた花壇横へ向かうと青い巻取り式のホースが置かれているのが見えた。


ホースの端はすでに水道とつながっている。


私は水道の蛇口をひねり、ノズルをひねって水やりを始めた。


チューリップやスミレ、芝桜なんかもある。


一見乱雑に植えられているようで赤から白へとグラデーションになっている花壇はとてもキレイだ。


「キレイ」


水やりをしながら呟く。


こんな素敵な場所があったなんて知らなかった。


「花が好きなんだ?」


突然後方から男の人の声が聞こえてきて私は半分ほど飛び上がって驚いた。


驚きながら振り向くとそこには私服姿の男子が立っていた。


「驚かせてごめんね。俺も今水やりにきたんだ」


「そ、そうなんだ?」


水やりに着たということはこの人も特別学級の人?


でも、私服の生徒なんて1人もいなかったし、声にも聞き覚えがなかった。


私が困惑して動きを止めていると「そこ、水やりすぎじゃない?」と、指摘された。


見ると芝桜が水にひたひたになりはじめている。


慌ててノズルをひねって水を止めた。
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