彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
「夏になるとミニひまわりなんかも植えるんだ。きっときれいな花壇になるよ」


「あの、花壇についてすごく詳しいんですね」


「あぁ。一応教えられたからね」


「へぇ、そうなんですか!」


一体誰に教えられたんだろうと思ったが、きっと先生に違いない。


この人は特別学級の人ではなさそうだけれど、花壇係なのだ。


「俺、そろそろ行くよ。まだ用事が残ってるんだ」


「はい。じゃあ――」


そこまで行って口を閉じる。


初めて逢った相手を別れる時はどう言えばいいんだろう?


『またね』だと、次を期待しているように感じるかもしれないし『さようなら』はなんだか突き放しているように聞こえないかな?


どう言えば正解かわからなくて戸惑っていると、ふっと笑うように息を吐き出された。


「それじゃ、また明日ね」


彼はそう言うと、手を振って私に背を向けた。


『明日ね』


それはまた明日ここで会おうという意味だ。


「また、明日……」


すでに私しかいなくなった花壇の前で、ポツリと呟いたのだった。
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