彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

どうしてこんなにあの人のことが気になるんだろう?


名前も知らない、今日始めて会ったばかりの人なのに。


家に戻ってからも私の頭の中には私服姿の男子がいて、楽しい会話を思い出して自然と頬が緩んでしまう。


これほど彼のことが印象的だったのは、きっとみんなと同じ制服を着ていなかったからだと思う。


私服でいるだけで水分と印象に残るものだ。


「さっきからニヤニヤして一体どうしたの?」


キッチンでお母さんの手伝いをしていると、気味の悪いものでも見るような視線を向けられた。


「べ、別になんでもないよ」


慌ててそう答えてボウルの中のふかし芋をポテトサラダにうるべく、すりつぶしていく。


「今日は帰ってきてからずっとニヤケてるじゃないの」


「ニヤケてなんか……」


頬に触れてみるとたしかに口角が上がっているようだ。


意識的に口角を下げてみるものの、自然と上がっていくのが感じられる。


これじゃ気持ち悪く思われても仕方ないか。


「今日は初めての特別学級だったものね。なにか良いことでもあった?」


「う~ん、特別学級で花壇係になった」


「花壇係?」


以外な返答だったようでお母さんは首をかしげる。
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