彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

休憩時間のたびに私は教室を出て彼のことを探した。


今はもちろんみんな制服姿だけれど、彼の声や仕草はちゃんと覚えているという自信があった。


「やっぱり1年生じゃないよね」


とりあえず1年生のクラスから調べはじめた私は、すぐに彼はいないと感づいた。


彼の大人っぽい雰囲気を感じない。


机に座って本を読んでる生徒や、軽く談笑している程度の生徒たちは多いけれど、そのどれもが彼とは似ていない体型や声をしている。


次の休憩時間には2年生の教室を調べてみよう。


教室へ戻った時静かな笑い声が聞こえてきて私は一度足を止めた。


またみんなの視線を感じる。


さっきは驚きの雰囲気があったけれど、今度は違う。


嘲笑の雰囲気がクラス中に満ちているのを感じ取って私は嫌な予感がした。


それでも平静を装って自分の席へと向かう。


机を見た瞬間細い息が漏れ出した。


嫌な予感は的中した。


机の上にはマジックで『ブス』『帰れ』などのラクガキがされている。
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