彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
犯人はもちろんわかっているし、やった本人が一番大きな声で笑っている。


でも私を傷つけたのはそれじゃなかった。


今まで遠目で見ていただけのクラスメートたちが一緒になって笑っているのだ。


誰も助けてはくれない。


重たい気持ちで雑巾を片手にラクガキを消していると、今度は後ろからゴミを投げつけられた。


思わず振り返り、睨みつける。


「なにその顔。恐いんだけど」


坂下さんが大げさに震えてみせる。


「恐い恐い。自分は人を傷つけるくせに、傷つけられたらそんな顔するんだ?」


憎しみを抱いた声。


だけど私は坂下さんたち3人のことを間違えたことはない。


これほど印象的な人たちなんだから、さすがに間違えることもない。


私はグッと下唇を噛み締めて、懸命にラクガキを消したのだった。
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