彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
「こんにちは」


同じように挨拶をする。


今日彼を探し回ったことは内緒だ。


学校内で偶然会うならまだしも、探し回って見つけ出したなんて知られたら気味悪がられてしまうかもしれない。


あくまでも自然に接していたい。


「なにか嫌なことでもあった?」


すぐに私の変化に気がついてしまう彼に戸惑う。


どうしてそんなにすぐわかるんだろう?


もしかして、全部顔に出ていたとか?


片手でホースを持ちながらもう片方の手で自分の頬に触れる。


柔らかな肉の感触がするだけだった。


「どうしたの?」


横に立ったその顔は花ではなく私の方を向いている。


「実はクラスであまりうまく行っていなくて」


つい、ポロッとこぼれ出てしまった言葉。


今まで誰にも相談できなかったことが口をついて出ていて、自分自身が驚いた。


こんなつもりじゃなかったのに、どうして話してしまうんだろう。
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