彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
先生たちも似たような話をしてくれていいた気がする。


だけど彼の説明はそのどれよりもわかりやすかった。


「だから、君にとって教室が苦痛なら、もう少し逃げていてもいいと思う」


彼の言葉に知らない間に視界が滲んできて、涙が頬を伝い落ちていた。


それは下の芝桜にポタリとくっついてしまう。


「キレイだね。君の涙はまるで宝石みたいだ」


彼はそう言って笑った。


宝石。


私もそう思っていた。


花につく水滴は宝石のようで美しい。


私の涙もそんな風に美しいのだろうか。


そう思うと涙は止まらなくなってしまった。


次から次へと溢れ出してきて目の奥はジンジンと痛む。


それでいて心はすごく軽くなっていることに気がついた。


彼は私が泣き止むまで、ずっと隣にいてくれたのだった。
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