彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
「ただいま」


重たい気持ちを抱えたまま家にたどり着いてしまい、つい暗い声でそう言った。


するとお母さんがすぐにリビングから出てきた。


「おかえり。今日はどうだった?」


その口調からとても心配してくれていることがわかる。


今までも、クラス替えや進学があるたびに同じように心配をかけてきた。


だからもうこれ異常自分のことで心配をかけたくない。


「と、隣の子と友達になったよ。雪ちゃんって言うの」


私は一瞬言葉につまりながらも言う。


「そう。いい子そう?」


「もちろんだよ。将来の夢に向かって頑張ってる子なんだ」


嘘はついていない。


その夢が声優で、全然違う声で話しかけられたことで失敗してしまったけれど。


でもきっと雪ちゃんの夢は叶うと思う。


「それよりお腹すいちゃった。なにか食べるものある?」


私はひときわ明るい声でそう言ったのだった。
< 7 / 141 >

この作品をシェア

pagetop