彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

休憩時間になるとどんなことをされるかわらかないから、私はその時間だけ1人トイレにこもることになった。


幸い誰もそのことに気がついていないようで、上から水をかけられるとか、そういう陰湿なことは起こらなかった。


授業内容は誰よりも私が一番理解していて、なにを当てられても答えることができた。


それを見たクラスメートたちは感心したような声をあげつつも、どこか遠慮している様子も伺えた。


きっと坂下さんたちのことを気にしているのだろう。


坂下さんたち3人は私が答えるたびにヤジを飛ばしてきていた。


「知奈ちゃん!」


昼休憩に入って特別学級へ向かうと、景子ちゃんがすぐに駆け寄って来てくれた。


「もうこっちには来ないのかと思ってた」


景子ちゃんはそう言って私の腕をぎゅっと掴む。


声の調子で不安そうにしていることがわかったので、私は微笑む。


「そんなことないよ。私にはまだまだこのクラスが必要だから。ただ、ちょっと用事があって向こうに行っていただけ」


そう説明すると景子ちゃんの雰囲気が和らいだ。


安心してくれたみたいだ。


今日も午前中に少しだけ彼のことを調べてみたけれど、やっぱり見つけることができなかった。


もう本人に直接聞いてしまおうかとも考え始めている。
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