彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
午後からは特別学級でみんなと一緒に授業を受けて、あっという間に放課後になっていた。


「知奈!」


教室から出ようとした時にキンパに声をかけられてふりむいた。


「なに?」


「お前ずっと花壇係りじゃん。俺そろそろ代わろうか」


キンパは自分が花が嫌いだと言ったから、私がしばらく花壇係りを引き受けたと思っているようだ。


私は左右に首を振った。


あの場所へ行かないと彼に会うことはできないのだ。


申し訳ないけれど、まだもう少し花壇係りを譲るわけにはいかなかった。


「ううん、大丈夫だよ。キンパは花粉症なんだから無理しないで」


「そうか? 本当に1人で大丈夫なのか?」


キンパは腕組みをして聞いてくる。


眉間にシワを寄せている顔を想像して少し笑った。


「大丈夫大丈夫。じゃあねキンパ、また明日」


私はそう言い、手をふって教室を出たのだった。
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