彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

気が付かなかった。


佳太くんがそれほど人気の生徒だったなんて。


でもそれならどうして休憩時間に探した時、見つけることができなかったんだろう?


疑問は残るが、きっと自分の探し方が悪かったのだろうと思った。


「知奈ちゃん。今日も午後からは特別教室へ行くの?」


鈴の音に話しかけられて私は「うん。えっと、雪ちゃん?」と、恐る恐る名前を呼んだ。


「うん雪だよ。そっか、でもお昼はこっちで食べない? みんなも知奈ちゃんと食べたがってるんだ」


そう言われて視線を向けると2人の生徒がこちらへ向けて手振ってくれている。


名前は……あの仕草だけじゃ、ちょっとわからない。


だけど胸に温かいものが広がって行くのを感じる。


「みんな知奈ちゃんに謝りたいんだって。自分たちのせいで、知奈ちゃんが教室にいられなくなったと思ってるの」


「そんな、みんなのせいじゃないよ」


左右に首振って言うと、雪ちゃんは頷いてくれた。


「わかってる。それに知奈ちゃんもなにか事情があるんだよね? 話してくれると嬉しいけど、無理そうかな?」
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