彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

恋をすることは楽しくて、そして苦しいものだと昔呼んだ少女漫画に書いてあった。


それがこれなんだと思い知って、その気持を払拭するように冷たいシャワーを頭から浴びたけれど、気持ちは全然晴れやかにはならなかった。


救いと言えばA組の友人たちだった。


私が教室へ向かうと必ず挨拶を返してくれて、休憩時間になると話しかけてくれるようになった。


私の失言がきっかけでなにかの病気であることがバレてしまったから、会話をする前に「私、雪だけど」と一言付け加えてくれる。


中学校や小学校では見られない光景がそこにはあった。


みんな私の言動と病名をつなぎ合わせて、調べてくれていたのだ。


けれどその気遣いは中学時代に受けたものとは少し違い、自然に馴染んでいくものだった。


私は過去の出来ごとを引きずって怯えてしまい、今のクラスメートたちのことをちゃんと見ることができていなかったのかもしれない。


次第にA組にいる時間が伸びていき、特別学級にいる時間が少なくなってきていた。


でもこれでいいんだ。


これが私が望んでいたことなんだから。


それでも、私の心の中にはいつでも佳太くんの姿があった。


彼は今日も花壇にいるのだろうか……。
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