彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
☆☆☆

それからまた花壇に通う毎日が始まった。


今度は特別学級の子も一緒だ。


どちらか一方が水やりできなくても、必ずもう1人が花壇へ来られるように配慮されたのだ。


「花、咲いてきたね」


景子ちゃんが嬉しそうに言う。


私は頷く。


あれだけ枯れていた花が徐々に元気を取り戻してきたころだった。


私達以外の足音が聞こえてきて振り向くと、そこには私服姿の彼が立っていた。


彼は私達を見ると少し首をかしげ、とまどっているような雰囲気を醸し出した。


「私、もう行くね」


景子ちゃんが何かを感じ取り、気を聞かせるようにしてその場を離れる。


2人きりになったとき、ようやく彼が口を開いた。


「やっと花壇に来てくれたんだね」


その口ぶりはずっと私を待っていたように感じられる。


「花壇の水やり、どうしてしてくれなかったんですか?」


そんなこと言うつもりはなかったのに、すねた子供みたいに口を尖らせてしまう。
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