ケイト ノ ボウシ
梅雨はすぐ過ぎた。


入道雲が上がるなか、私はそんな空を窓から眺めた。

私にはもう髪はない……

代わりに帽子をかぶって。


『千尋。なんかいるものない?』

『ないよ。お母さん。仕事行って大丈夫だよ?』


一人になりたい。これが本音だった。



三回目の抗がん剤を打って一週間がたっていた。


今友達に会いたいかと看護師に聞かれた。

『今の自分を見せたくないから‥‥』

これって…………………
“強がり”って言うのかな……………?
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