その甘いキスにご注意を ~鬼上司の顔の裏に隠された深い愛情と激しい熱情~
「大変なんですね……」

素直に思ったことを口にする。
確かに、営業部が外回りに出ることは知っていたし、私も土日に外出するときとかに営業の人っぽい人はたまに見かけることはあった。
でも、ここまで大変なんだとは今まで思ったことなかった。

「僕オジサンだからさ、家に帰っても自炊する元気とか残ってないの。だから平日は毎日三食、中食外食ばっかりで」
「っ、オジサンって……そうには見えないですよ」

思わず少し笑ってしまった。
でも、今言ったことはお世辞ではない。
白髪は生えてないし、肌にもハリがある。
いって三十前半くらいだと思うけど……。

「そうかな?」
「はい。っていうか、失礼ですけど田浦さんっておいくつなんですか?」
「二十九だよ」

えっ、一個上!?
確かに、私も三十くらいかと思っていたけど……意外に若い。
って、失礼か。

「意外って思ってるでしょ」
「い、いや、そんなことは……」
「絶対嘘だぁ」

慌てて取り繕うも、田浦さんにはお見通しのようだ。
「すみません……」と謝ると、田浦さんは面白そうに笑った。

「いいよいいよ、慣れてるし」
「あ……はぁ……」

……なんか、この人と話してると、なぜかどんどん話が進んでいく。
初めて会ったばっかりのはずなのに、今ではすっかり緊張感もなくなっていて。
そろそろランチを終わらせないと、お昼の休憩時間が終わってしまう。

不思議な人だなあ。
そう思いながら、私はまた、パスタを数本フォークに絡めた。
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