その甘いキスにご注意を ~鬼上司の顔の裏に隠された深い愛情と激しい熱情~

***

ランチを食べ終わったところ。
食器を返却口に返そうと立ち上がった私は、田浦さんに呼び止められた。

「なんですか?」
「ああいや、ここで会ったのもきっと何かの縁だろうし……良ければだけど、連絡先交換しない?」
「いいですよ」

私はあまり連絡先を交換することにこだわらない。
仕事柄も、仕事を休まない限りあまり連絡を取り合う程のものでもないし、私自身、あまり連絡を頻繁にかわすことは得意ではない。

でも今、田浦さんとなら交換したいと思った。
理由は単純、さっきまで会話をして楽しかったから。
彼となら、こうしたメッセージのやり取りも楽しそうだし、もっとなかよくなれるだろうと、純粋にそう思ったから。

彼のスマホに表示されている連絡先のQRコードを私が読み取り、連絡先を追加する。
するとすぐに、彼も私の連絡先を登録した。

「ありがとう」
「いえ。こちらでもよろしくお願いします」
「うん、よろしくね。……それじゃあ、またの機会に会おう」

田浦さんは小さく、挨拶するように私に向かって手をあげた。
私はそれに会釈で返す。
そして私たちは、全くの別方向に分かれて進んだ。
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