その甘いキスにご注意を ～鬼上司の顔の裏に隠された深い愛情と激しい熱情～

透明感のある白乳色が、私の視界をゆったりと泳ぐ。
そして胸元の水面から香るローズの微香は、同じ水面からの熱で上に上昇しているようで。
夜十時、夕食もそこそこにお風呂に入った私は湯につかってバスタイムを過ごしていた。

今日は色々あったなぁ……。
湯に体を静めてから数秒、思ったことは田浦さんのこと。
けれど、すぐに私は意識を現実へと引き戻した。

まずはむくんだ脚や顔をマッサージして、血の流れを良くする。
次に、長時間にわたるパソコンの使用ですっかり固くなってしまった両肩を揉む。
そして体のツボを押したり流したりして、リンパ管のマッサージもする。

この時の私には、入浴剤の香りなんか気にする暇はない。
私は一生懸命体のケアをしている。
これはいつもの日課で、この後は洗顔をした後にバスルームを出て、洗面所ですぐに保湿をする。
デパートの一階で売っているような高い化粧品や乳液、ヘアオイルなどを使って全身を隈なくリラックスさせていく。

二十八歳。
三十路に近づくにつれて少しずつ衰えが見え隠れし始めたからこそ、私は今の美しさを維持していくため、このくらいはしないといけない。
浴槽の中で行うマッサージ等をすべて終え、私は指の先がふやけてしまう前に湯から出た。

バスルームの壁に取り付けられた鏡の曇りを、サッと手で撫でて落とす。
鏡を見つめると、スッピンの私の顔がこちらを無表情に見つめてきた。