その甘いキスにご注意を ~鬼上司の顔の裏に隠された深い愛情と激しい熱情~
これまで、”いい男”を捕まえるために、心を鬼にしてここまでやって来た。
私は無事第一志望の高校に合格し、その後国公立大学へと進学。
そして私が今働いている、大手化粧品メーカー『KOHAKU』に入社したわけだけれど……
どうしよう。
今まで自分磨きにしか生きてこなかったせいで、友達が一人もいない。
痩せてみれば、自分でも思ってしまうほど―—過去があるからかもだけど―—美人だった。
それに、私はいつも笑うように意識している。
それなのになぜか、女性社員とは仕事の話しかしない。
それはいいんだけど、男性社員とも、あまり話さない。
どうしよう。
私は今28歳。
同い年の同僚は付き合っている人も少なくなく、結婚している人だっている。
それなのに、私は独り身。
もっというなれば、私は処女。誰にも抱かれたことがない。
……おかしい。
ずっと画面を見続けていた目が疲れてきて、少し休憩をしようと椅子の背もたれに身を預ける。
ふと時計を見れば、その針は12時半とちょっと過ぎを指していた。
そういえば、お腹空いた。
……社食行こ。
貴重品だけもってデスクから離れ、社食のある方へと歩き出す。
この時間帯なのだから当たり前だけど、社食の入り口は混んでいた。