白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「キッチンも昼食の準備をはじめているかもしれませんが、端をお借りするくらいなら邪魔にならない時間だと思います。必要な材料も揃っているはずですが――そうですね、作りたいクッキーはございますか?」

「それなら、間にジャムを挟んだクッキーは作れる?」

 クロードが兄に会いに家に遊びに来た時、カードゲームをしながら片手で気軽につまめるからと、クッキーをよく一緒に食べた。

 中でもキラキラと輝くジャムを挟んだクッキーは可愛らしく、ロゼリエッタのお気に入りだった。

 そんな幸せな思い出の詰まったクッキーを自分で作れるのなら作ってみたい。

「もちろんです。あまり特殊なものだと今からのご用意が間に合いませんが……」

「イチゴと、オレンジのマーマレードは用意してもらえる?」

 記憶の中にあるクロードはマーマレード入りを好んでいた。

 もしかしたら今はもう好みも変わってしまったかもしれないけれど、変わったのならそれはそれで彼の新しい一面を知られるということだ。悪いことだけじゃない。

「その二つなら問題ありません」

「良かった。じゃあ、用意をお願いね」

「畏まりました。では、そうと決まれば食後に服用なさいますよう、お薬をお預かりしております。そちらを飲んで、明日の為に今日も一日安静に過ごしましょう」

「うん」

 オードリーに手渡された薬を飲み、ベッドに横たわる。

 目を閉じれば薬の効果か、すぐさま眠りに落ちて行った。

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