白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「お恥ずかしいことに不勉強な私は隣国で何故王位継承権を巡る争いが起きているのか、マーガス殿下が現在どのような状況に置かれているのか、まるで分からないのです。お話出来る範囲内で構いません。どうか、お聞かせ願えませんか」
婚約が解消されたいちばん大きな原因は、やはりそれなのだろうと思う。
自分のことだけで手一杯だったロゼリエッタが、少しでも隣国の情勢に目を向けられたなら未来は変わっていただろうか。
――否。ロゼリエッタはレミリアじゃない。
だからどうすることも、できなかった。
レミリアへの劣等感だってそうだ。
比較したところで彼女にはなれない。敵うはずもない。
でもクロードの心にいるのは彼女だから、どうしたって醜い感情を抱いてしまう。
クロードに想われるレミリアに、なりたかった。
「――王位継承にまつわるいざこざは」
俯きかけたロゼリエッタの顔を、シェイドの声が引き上げた。
どこまで話して良いのか確認しているのだろう。何かを探っているような様子で言葉を紡ぐ。
「現国王のグスタフ陛下がまだ王太子殿下であられた頃から、すでにその兆候は散見されていたようです。陛下は幼少の頃、他のご兄弟と比べてお身体が丈夫ではなく、二人の弟君フランツ殿下とアーネスト殿下のどちらかに王位をと望む声も決して少なくはなかった。マーガス殿下からはそう聞いています」
婚約が解消されたいちばん大きな原因は、やはりそれなのだろうと思う。
自分のことだけで手一杯だったロゼリエッタが、少しでも隣国の情勢に目を向けられたなら未来は変わっていただろうか。
――否。ロゼリエッタはレミリアじゃない。
だからどうすることも、できなかった。
レミリアへの劣等感だってそうだ。
比較したところで彼女にはなれない。敵うはずもない。
でもクロードの心にいるのは彼女だから、どうしたって醜い感情を抱いてしまう。
クロードに想われるレミリアに、なりたかった。
「――王位継承にまつわるいざこざは」
俯きかけたロゼリエッタの顔を、シェイドの声が引き上げた。
どこまで話して良いのか確認しているのだろう。何かを探っているような様子で言葉を紡ぐ。
「現国王のグスタフ陛下がまだ王太子殿下であられた頃から、すでにその兆候は散見されていたようです。陛下は幼少の頃、他のご兄弟と比べてお身体が丈夫ではなく、二人の弟君フランツ殿下とアーネスト殿下のどちらかに王位をと望む声も決して少なくはなかった。マーガス殿下からはそう聞いています」