白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
35 .自分だけができること
「下りの階段になってるから気をつけて、ロゼ」
「はい。ありがとうございます」
床下に設置された緩やかな階段を下り、生まれて初めて地下道に足を踏み入れる。
道幅は二人なら並んで歩ける程度には広い。本来の用途を考えれば灯りが設置されているはずもなく、しかし壁はぼんやりと光を放つ材質で造られていて真っ暗闇というわけではなかった。それでもこのまま進むには心許ない明るさだ。ダヴィッドがカンテラを灯せば、少し先まで見通せる程度に視界が開けた。
先に聞いていたように不衛生な場所ではないようだった。
空気も、上と比べたら多少の淀みはあるが我慢できないほどではない。
王家の手が入っているから、ここが特別な道としてそれなりに整備されているのだろう。
カンテラを掲げるダヴィッドと並び、ゆっくりと歩く。
先に地図をもらっているらしく、逆の手には横半分に折り畳んだ紙を持ち、時折それに目を向けている。先程通って来た道ということもあってか、その足取りに迷いはなかった。
二つの足音が、ただ静かに響いている。
振り返っても扉が見えない場所まで来た時、思い切ってロゼリエッタは声をかけた。
「やっぱり私は、まだ家へ帰ることはできないのでしょうか」
ダヴィッドのことは信用している。
この地下通路から安全な場所に連れて行ってくれるのだろう。
それでも、目的地はどこなのかを知っておきたかった。
ダヴィッドならすぐ答えてくれると思ったのに、どうしたわけか返事はない。
「はい。ありがとうございます」
床下に設置された緩やかな階段を下り、生まれて初めて地下道に足を踏み入れる。
道幅は二人なら並んで歩ける程度には広い。本来の用途を考えれば灯りが設置されているはずもなく、しかし壁はぼんやりと光を放つ材質で造られていて真っ暗闇というわけではなかった。それでもこのまま進むには心許ない明るさだ。ダヴィッドがカンテラを灯せば、少し先まで見通せる程度に視界が開けた。
先に聞いていたように不衛生な場所ではないようだった。
空気も、上と比べたら多少の淀みはあるが我慢できないほどではない。
王家の手が入っているから、ここが特別な道としてそれなりに整備されているのだろう。
カンテラを掲げるダヴィッドと並び、ゆっくりと歩く。
先に地図をもらっているらしく、逆の手には横半分に折り畳んだ紙を持ち、時折それに目を向けている。先程通って来た道ということもあってか、その足取りに迷いはなかった。
二つの足音が、ただ静かに響いている。
振り返っても扉が見えない場所まで来た時、思い切ってロゼリエッタは声をかけた。
「やっぱり私は、まだ家へ帰ることはできないのでしょうか」
ダヴィッドのことは信用している。
この地下通路から安全な場所に連れて行ってくれるのだろう。
それでも、目的地はどこなのかを知っておきたかった。
ダヴィッドならすぐ答えてくれると思ったのに、どうしたわけか返事はない。