白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 テーブルを挟んで向き合う二人がけのソファーにダヴィッドと並んで腰を下ろす。

 その正面のソファーにはレミリアが一人で座った。お茶の準備を終えたレミリア付きの侍女が退室すると、室内はしんと静まり返る。


 レミリアは急かさなかった。

 じっと、ロゼリエッタの言葉を待っている。けれどこれでは無言の重圧を与えてしまうと悟ったのか、赤みの強い褐色の紅茶が満たされたティーカップに手を伸ばした。

 砂糖とミルクを入れ、ゆっくりとかき混ぜる小さな音ですら空気を震わせる。でもその張り詰めた空気を生み出しているのはロゼリエッタだ。ややあって、ロゼリエッタは自らに重くのしかかる空気を振り払うように顔を上げた。

「単刀直入にお尋ねする無礼をどうぞお許し下さい、レミリア王女殿下」

 それから息を一つ飲み込む。

 祈るように両の指を組み、レミリアを見つめた。

「クロード様は投獄……あるいは処刑されてしまうのでしょうか」

「何故急にそのようなことを?」

 レミリアは質問で返しながらもダヴィッドに視線を向けた。

 その表情も声色も変わらない。

 突拍子もない発言に驚いた様子もなく、この反応こそが答え――疑問の肯定なのだと思った。

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