白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 もし事実だとして、クロード本人が伝えるわけがない。だからダヴィッドを情報の出どころとして疑うのはもっともだろう。しかし、彼は悪びれることなく王女の視線を真っ向から受け止めた。

「殿下。失礼ながら我が従妹ロゼリエッタの恋も、人生も、希望も――絶望も、全て彼女のものだと思うのです。ロゼが願うなら、何も知らずに生きて行くことが最善でしょう。ですが、今の彼女の想いはそこにありません。殿下やクロード様がそれを本意とはせずとも、巻き込まれた以上は知る権利があると考えます」

 ダヴィッドとレミリアの強い光を秘めた視線が交錯する。


 先に折れたのは、やはりと言うかレミリアだった。溜め息を吐き、だから私は反対だったのよ、と小さく首を振る。

「好きな人のことだもの。気になるわよね」

「はい」

 今まででいちばん慈愛のこもった目だ。

 ロゼリエッタは強くしっかりと頷き返した。そこに覚悟と決意を見て取ったのか、レミリアが初めて表情を変える。

 顔なじみの少女への親愛の情を消し、誰に対しても公正な王女として毅然とした面持ちで口を開いた。

「では、ロゼリエッタ・カルヴァネス嬢にお話し致しましょう。あなたの危惧していることは残念ながら事実です。クロード・グランハイムは隣国の王太子マーガス殿下の暗殺を企てた実行犯として、近日中に身柄を拘束されることでしょう」

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