白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 息のかかった侍女をマーガスの元に送り込むことも、彼が飲むであろうお茶に薬物を混ぜ込むことも、どちらも同じくらい難しいことのように見える。

 けれど実際に後者の方法が取られた。そして、あくまでも表向きでは上手くことが運んだ。

「実行犯はまだ見つかっていないわ。でも確実に、薬物だろうと毒物だろうと――極端な話、望むものを混入させられる抜け道は一つだけある」

 レミリアはその唯一の抜け道が使われたと確信しているようだった。少なくとも、先の二つの条件よりは安易に実行できるということだ。

「薬物が混入されていた、そう報告書に書けばいいだけ。検証の場には私もマーガスもいなかったのだから、どうとでもなるわ。普通に考えたら検証結果をでっち上げてまで、自国に大ダメージを与えたい人物がいるなんて思わないものね」

 隣国のクーデターに加担する人物が国内にいることはシェイドから聞いている。だからロゼリエッタも離宮で匿われていた。

 またわずかに点と点が繋がった気がして、新たな疑問を重ねる。

「夜会の最中に起きたという西門での騒ぎは関係があるのですか?」

「そうね。おそらく目的は二つあって、どちらもあなたには関係があることだと言っても良いかしら」

「私に?」

「ええ。まずは何らかの騒ぎを起こして陽動することが目的だったのが一つめ。でも陽動はあくまでも陽動。あの時の彼らの本当の目的は、もっと別のことだったの」

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