白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
(クロード様の、嘘つき)

 ロゼリエッタは人知れず唇を噛みしめた。

 冤罪を認めてしまうことは、それだけで虚偽の証言になってしまうではないか。


 どのような形で裁判が進行し、クロードに罪人の烙印が押されるのか分からない。

 一つずつ行動の裏付けを取るかもしれないし、あるいは手順など全く取らずにすぐ閉廷されるのかもしれない。

 確実に言えることはクロードが暗殺を目論んだと自ら口にしたら、そこで裁判が終わるということだ。


 心臓が早鐘を打つ。大きく息を吸い、そして吐いた。


 いざ裁判がはじまろうかというその瞬間、ロゼリエッタは発言権を求めておずおずと、けれどしっかりと右手を高く上げる。

「お……恐れながら陛下。クロード・グランハイム様に課せられた罪状に関し、異議を申し立てます」

 ロゼリエッタの声に騒めきが走った。

 場にいる大人たちの視線を集め、委縮しそうになる心を奮い立たせるべく指先まで意識して綺麗に伸ばした。それから精一杯の淑女の礼をしてみせる。

「大丈夫よ、ロゼ。私はあなたを信じてる」

 唯一、前を向くレミリアが囁いた。

 大丈夫。ロゼリエッタは頷き、王を真っすぐに見つめた。

「わたくしはロゼリエッタ・カルヴァネスと申します。どうか、発言のご許可を」

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