白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「殿下は信用のおける侍女しかいなかったと仰せになられた。しかしその内の一人ないし複数人をロゼリエッタ嬢が買収などで抱き込み、実は入れ替わっていた可能性も考えられます」

「わたくしの侍女が買収に屈するような者だと仰りたいの?」

「滅相もございません。あくまで可能性の一つを申し上げたまでですが、度を越えたことはお詫び申し上げます」

 傍から聞いても何ら心のこもっていない謝罪だ。

 やはり公爵の方が場慣れしている。公爵と対等かそれ以上に話し合える王たちは口を挟むことはしなかった。ここは公正な裁きを下す場だ。どちらかの理論が破綻しない限りは、彼らが尋問などをすることはないのだろう。

「それならば、わざわざ侍女に変装していたロゼリエッタ嬢がいたと報告が上がるはずよ。彼女が姿を偽って侍女に扮することこそ、何か事情があっての行動ですから。公爵は何故、ロゼリエッタ嬢を見かけたわけでもないのに彼女のハンカチだと断言出来ますの?」

「理由は先程申し上げました通りにございます」

「署名の入った手紙と一緒に渡されたから、だったわね?」

 レミリアは息を大きく吸い込んだ。

「では誰がロゼリエッタ嬢の姿を見たと言うの? 侍女に扮していたという姿を見たという者でも構いません。この場において、マーガス王太子殿下暗殺を企てた犯人の特定に関する重要な証言となります。今から公爵にいくばくかの時間を与えましょう。それを持つ者を連れて来なさい」

「王女殿下からとて、そのようなご命令には従いかねます」

「何故?」

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