白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 冷ややかに言い放つレミリアの声は、王女らしい傲岸さに満ちている。

 誰もが平伏せんばかりのものだったが、スタンレー公爵の表情に変化はなかった。

「ハンカチ以外に確かな証拠を掴んでいるから、公爵はロゼリエッタ嬢が疑わしいと考えていらっしゃるのでしょう? それとも――証拠をでっちあげて、ロゼリエッタ嬢を冤罪に嵌めて無実の主張も聞き届けないおつもりだったのかしら」

「ロゼリエッタ嬢の行動は、暗殺に失敗したから逃亡を図ったと取られてもおかしくはない行動かと存じます」

「まあ。公爵がそう主張したいだけではありませんの? 罪を立証したいのならそれだけの物証が必要なことくらい、公爵も良くお分かりでしょう」

 そこで一度を噤み、嘆かわしいとばかりに大仰な仕草で肩をすくませた。

「ロゼリエッタ・カルヴァネス嬢を冤罪にかけたいのでなければ、客観的な証拠をご提出下されば結構なこと。ただ状況のみで、さも真実であるかのように弾劾することをわたくしは見過ごせないというだけです」

 レミリアがロゼリエッタを必死に守ってくれている。

 それは何と心強く、嬉しいことだろう。

 だけどこのままでは彼女も巻き添えにされてしまうのではないか。


 そんな不安が頭をもたげて来た時だった。

「国王陛下。私からもご覧になっていただきたいものがございます」

 クロードの言葉が再び場の空気を変えようとしていた。

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