白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

42. 決着

 今度はクロードから二通の手紙を受け取った王は、それぞれに印璽の紋様と署名とを確認すると表情を険しくした。

「ご覧のようにすでに開封済みです。陛下が中を改めて下さっても構いません」

 公爵同様にクロードは一礼して部屋の中央へと戻る。

 王は便箋を取り出すと順番に目を落とし、ほどなくしてその顔に苦渋の色を浮かべた。

「にわかには信じられぬ。いや――しかし」

 今度は部屋の最奥から入口側、ほぼ正反対の位置にいるスタンレー公爵を見やる。

 おそらくは一通はロゼリエッタが離宮から立ち去るきっかけになった、あの手紙なのだと思った。もう一通に関しては全く見当もつかない。


 文面など知るはずもないロゼリエッタや、そもそもが何の文書なのかすら想像もつかない貴族たちは釣られるかのように王の動きを追った。

「スタンレー公爵。この手紙に書かれていることも事実なのか」

「あいにくと、何が書かれているのか私には分かりかねます」

 スタンレー公爵の答えに王は忌々しげに眉を寄せる。

 彼が知らないはずがない。そう判断しての問いかけだと公爵が分からないはずもないだろうに(うそぶ)いた。

 その態度はさすがに王の不興を買ったらしい。王は怒りを隠すこともせず公爵を()めつける。

「クロード・グランハイムが王太子暗殺を企てたと名乗り出ねば、ロゼリエッタ・カルヴァネス嬢が犯人だという証拠と共に告発する――。ここに、貴公が王太子に宛てた文書と、それを受けて王太子がクロードに宛てた文書が揃っている。本当に貴公がこのような文書を書いたのか」

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