白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「話したいこともあるし近いうちに来るつもりではいたんだ。だけど、まだ体調が悪いならまた出直して来るよ」
「大丈夫です。今は熱も下がりましたから」
今日もレオニールと昼食を摂った後、薬を飲んで一眠りしたばかりだ。意識も比較的はっきりとしている。話をする分には何も問題がないと思われる状態だった。
ダヴィッドはそれでもまだロゼリエッタの体調を慮るように顔を窺ったものの、そう何度も足を運べる状況にはないのだろう。意を決した面持ちで唇を引き結んだ。
「こんな手紙を先日受け取ったんだ」
上着の内ポケットから一枚の封筒を出し、ロゼリエッタに渡す。
「グランハイム公爵家の使いだと言う紳士が家を訪れてね。僕に、この手紙をと」
直接届けられたことは事実のようだ。表側にはダヴィッドの名が書かれているだけだった。
ごく短い文字列でも何度か見たことがあるから分かる。クロードの文字に間違いない。
受け取って裏面を見ると、薄紫の封蝋にはグランハイム公爵家の紋章が刻まれていた。差出人としてクロードの署名もある。
筆跡にさえ、涙がこぼれそうになった。
ロゼリエッタはきつく唇を噛みしめて堪えた。クロードからの手紙ですら、ロゼリエッタにはもう二度と届かない。
それがダヴィッドには届けられた。どうしてという疑問と、ずるいと思う嫉妬とが、頭の中をぐるぐると渦巻く。
「クロード様から……ダヴィッド様に……?」
「大丈夫です。今は熱も下がりましたから」
今日もレオニールと昼食を摂った後、薬を飲んで一眠りしたばかりだ。意識も比較的はっきりとしている。話をする分には何も問題がないと思われる状態だった。
ダヴィッドはそれでもまだロゼリエッタの体調を慮るように顔を窺ったものの、そう何度も足を運べる状況にはないのだろう。意を決した面持ちで唇を引き結んだ。
「こんな手紙を先日受け取ったんだ」
上着の内ポケットから一枚の封筒を出し、ロゼリエッタに渡す。
「グランハイム公爵家の使いだと言う紳士が家を訪れてね。僕に、この手紙をと」
直接届けられたことは事実のようだ。表側にはダヴィッドの名が書かれているだけだった。
ごく短い文字列でも何度か見たことがあるから分かる。クロードの文字に間違いない。
受け取って裏面を見ると、薄紫の封蝋にはグランハイム公爵家の紋章が刻まれていた。差出人としてクロードの署名もある。
筆跡にさえ、涙がこぼれそうになった。
ロゼリエッタはきつく唇を噛みしめて堪えた。クロードからの手紙ですら、ロゼリエッタにはもう二度と届かない。
それがダヴィッドには届けられた。どうしてという疑問と、ずるいと思う嫉妬とが、頭の中をぐるぐると渦巻く。
「クロード様から……ダヴィッド様に……?」